或るロリータ

A Certain Lolita

懊悩

東京に染まれなかった

東京は良い街だ。いや、正確にいえばとても便利で、平等で、たくさんの可能性がある街、だろうか。職も、娯楽も、人との出会いも、私の生まれた田舎町なんて、質も量も比べる対象にすらならない。それくらい、東京になくて田舎にあるものなど、ほとんどない…

明け方症候群

私はあまり集中力のつづく人間ではない。仕事をしている最中も、頭の中では「早く夜になってビールを飲みたいなあ」などと考えているし、物事に対して意識のすべてを注いで取り組むということがない。とにかく自堕落な人間なのだ。 ただし、世の中の何もかも…

あの頃の未来を過ぎて、どんな風に生きてゆくか

夏が好きだと叫びつづけてきた私だけれど、冬にしか思い出せない記憶もある。朝、外に出た瞬間の澄んだ空気に目が醒める清しさや、短い真昼の陽だまりにまどろむ心地よさ、あるいは肌寒くなってきた夕べに南の窓を閉める直前、ふと漂ってくる夜の匂いに紛れ…

そうして私は書けなくなった

文章を書くのが好きだった。それに気がついたのは中学二年生の頃。それまで私は周りのクラスメイトと比べても文章が特別に上手いわけではなかったし、私より整理された思考を持ち、私より美しい表現ができる人は幾らでもいた。決して「文章が上手い人」と尋…

森田童子が死んでしまった

毎年六月になると必ず思い出す曲がある。切っても切れないみずいろで、私の心をつなぎ留めている儚い歌声がある。どこへ行って何をしようと、街も季節も私自身もすべて変わってしまっても、かならず戻れる場所がある。弱くて優しくてふるえてばかりいたあの…

社会では「すり減らさなかった人」が勝つ

先日、中学校と高校をともに過ごした同級生から電話がかかってきた。内容は、気まぐれな近況報告みたいなものだった。彼とは学校で特別仲がよかったというわけではない。教室にほとんど話せる相手のいない私に対して、彼は成績は悪かったが部活だけはひたす…

オンとオフが切り替えられない人生になってしまった

なんて言うと、大袈裟すぎるだろうか。しかし、近頃の私の悩みといえば、ほぼそれに尽きるといってもいい。中学生以降、私は学校なんて行かなくて済むなら行きたくないと思うたぐいの人間だった。部活も勉強も、趣味でさえ、一筋で打ち込むということを知ら…

女性が髪を切るということ

女性が髪を切るということがどういうことかは、男にはよくわからない。実は深い意味なんてないと言われているけれど、その一方で、やっぱり何かしらの意味があるのではないかとも疑ってしまう。結局私たちはその真相を知ることなどできないのだ。あの日女子…

「キツイけど定時に終わる仕事」を選ぶことは果たして正しいのか

仕事と趣味、この二つは人生にとって非常に重要なものである。趣味なんて、所詮付加価値でしかないという人もいるかもしれない。確かに、最低限の給料、最低限の衣食住を得ることと比べて、趣味というものは明確な基準の存在しないものである。まったくなく…

人に何かを伝えるということの難しさ

人は、自分のためだけに発せられた言葉の真理にはなかなか気づかないものである。学問にしろ恋愛にしろ、自分のためだけに用意された言葉、作られた言葉は、案外心に響かない。人は、日常の中からしか学ぶことのできない生き物なのだ。 だから本当に伝えたい…

酔っぱらうということは、憂鬱を先送りにするということである

絶望の朝はいつもアルコールの残り香がする。たとえば楽しい夜があったなら、どうにかその夜を終わらせたくないと思ってしまうのが人間である。そうして夜を引き延ばすために酒を飲み、月曜日から金曜日までのあいだに起きたあらゆるもやもやを、火照った頭…

なぜネットサーフィンをしているときは時間が一瞬で過ぎるのか

インターネットは便利なものである。指先ひとつで世界中の情報を簡単に得られるからだ。ネットの海を飛び回るのは誰も楽しい。休日など起き抜けにツイッターを見て、そこで面白そうなリンクが貼られているのを思わずクリックし、そこからまた別の記事に飛ん…

人前で絶対に歌えなかった私がカラオケを好きになるまで

歌が好きな子供だった。流行りのJ-POPやTVのCMソングを、親の前でも近所のおばさんの前でも友達の前でもいつも口ずさんでいた。街はどこでも私にとってステージだったし、太陽はスポットライトだった。 特に女性歌手の曲が好きだった。少年特有の甲高い声で…

遅筆の苦悩

私は書くのが遅い。とても遅い。ここのところほぼ毎日ブログを更新しているけれど、ひとつの記事の分量は1000文字から5000文字の間くらい。大した分量ではない。その癖いつも気がついたら一時間くらいかかっている。 私が書くのが遅い原因は、何も人差し指で…

人間を辞めた夜

人はどうして真夜中になると食欲が急激に湧いてくるのだろう。 人はどうして酔っ払うと幾らでも食べられるような気がしてくるのだろう。 つまり夜更けまでお酒を飲んでいる状態というのは、もっとも不健康でもっとも自堕落で、断罪されるべき悪徳にちがいな…

私が高校時代に友達ができなかったわけ

私には友達がいなかった。ただの一人もいなかった。人が「青春」と聞いて真っ先に思い浮かべるであろう高校時代の三年間にである。 私が生まれたのは九州の片田舎である。町には大きな川が流れ、山もあったし田園風景も広がっていた。むしろそれしかなかった…

ブログを毎日更新してはならない

5月にこのブログを作ってから、夏が始まるまで半分放置していた。そして8月に入って一度更新してからは、ほとんど毎日のように更新して、一昨日で気付けば10日連続で更新しているという私にしては異例の記録が出た。 夏は太宰の『女生徒』を読もう - 或るロ…

なぜ結婚しないのか

結婚しない若者が増えている、というのは散々言われた話であるが、結婚という言葉が未だ重々しいことにその原因があるのではないかと思う。 例えばある男女がいて、最近彼女の方がゼクシィを読んでいる、みたいな。男の結婚に対するプレッシャーを表す例えと…

妹が美少女であることの苦悩

私の妹は美少女である。 うっかり人前で言うと好奇の目で見られる。身内を褒めることは日本人にとって馴染みのない習慣らしい。といっても、外国のファミリーがどんな関係性なのか知らないけど。少なくとも、「うちのきょうだいは最高だぜ!」なんて言ってる…

古くさい恋の唄ばかり

私は自分の部屋にいる時や、車を運転している時、そのほか空き時間があれば基本的に音楽を流している。ジャンルにこだわりはないけれど、フォーク・歌謡曲辺りが多い。この趣味、日本の歴史の中でみれば王道だと思うんだけど、周りの人間にまったく理解され…