或るロリータ

A Certain Lolita

文藝

文章の距離適性

かつてTwitterが登場したとき、1ツイートにつき140文字という制限が、人々を発信へ駆り立てた。私もその例に漏れなかった。 ブログには書こうと思えばどんなに長い文章だって載せられるけれど、何文字でも書いていいと言われて、実際に何文字でも書ける人は…

そうして私は書けなくなった

文章を書くのが好きだった。それに気がついたのは中学二年生の頃。それまで私は周りのクラスメイトと比べても文章が特別に上手いわけではなかったし、私より整理された思考を持ち、私より美しい表現ができる人は幾らでもいた。決して「文章が上手い人」と尋…

淋しさがつのりすぎて「孤独」をテーマにした本を作ってしまった

青春時代を通して誰にも負けない唯一のものがあるとすれば、私にとってそれはどこまでも孤独であったということだけだ。恋も、遊びも、勉学も、十代の私には手に負えないものだった。私は誰からも期待されず、また、誰かに期待することもやめた。だから私は…

何かをやり残したと感じる夜にブログを書く

私がブログを書きたくなるのは、きまって後ろ向きな理由からである。仕事が上手くいっているとき、趣味を謳歌するのに忙しいとき、旧友たちと飲み明かしたとき……そんな日の私にはブログを書こうなんて発想はない。そもそもこのブログだって何の理念も目的も…

ポケモンに支配された街の中で

街がいっぺんに明るくなった。明るくなりすぎてしまった。憂鬱なものはみんな騒々しくなり、病もみんな健康になり、あらゆるビルとビルの隙間にまで光が当たるようになった。街に陰などどこにもなくなった。昼が永遠に終わらなくなった。 こんなに天気のよい…

少女になりたかった私の話

きっと私は少女になりたかったのだ。少年として煌めきながら、青年として駆け抜けながら、大人になって立ち止まりながら、いつでも少女になりたかった。懐かしいという私のいちばん好きな感情に連れ去られて、まぶしい陽射しの中へ戻りたい。できることなら…

合コンで好きな文豪を聞かれたときの最適な答え方

まずはじめに申し上げると、私は合コンに参加したことがない。それは私が幼い頃からずっと心に決めた許嫁がいて、来る日も来る日も招待状を破り続けていたからという訳ではない。そもそも私の元には合コンへの招待状など届いたためしがなかったのだ。その原…

noteが100記事に達したので、自らの精神状態を振り返る

noteを始めたのが一昨年の七月のこと。もう二年も経とうとしているのがおそろしい。 noteは私にとって精神安定剤のようなものだった。あの居心地のよい空間で、好き勝手にポエムを書き散らすことは、ずいぶんと憂鬱な頃の私を救ってくれていた。 といっても…

noteで小説を書くのが楽しい

noteというサービスをご存知だろうか。まだ数年前にできたばかりなのだが、これだけ情報が氾濫する社会の中で、シンプルにクリエイターが写真でも音楽でも文章でもなんでも投稿できるというサービスである。noteには投げ銭システムがあり、それで大儲けして…

文芸フェスで夜の丸の内へ行ってきた

風のさわりが肌に優しくなり始めた早春の宵、ようやく社会復帰した私は久しく終業後の心地よい気だるさを引きずりながら、中央線の上り電車の混み合う車内へ乗り込んだ。向かう先は東京駅丸の内ビルディング。今宵はなにやら文芸フェスなるイベントが行われ…

伊藤潤二という天才

伊藤潤二という漫画家を知っているだろうか。よく稲川淳二と勘違いされることがあるが、ホラーという点では共通している部分がある。だが、伊藤潤二の漫画は単なるホラーではない。圧倒的な画力と、斜め上を行く発想で、ただおぞましいのではなく、精神的に…

私が上京を共にした12冊の本

上京してもうすぐ三ヶ月だ。計画通りには行かないことばかりだけれど、なんとか生きている。思い起こせば上京前日も、ギリギリまで荷造りをしていた、というか、当日の朝にもまだ準備が終わっていなかったような気がする。ろくに寝る時間もなく、早朝に起き…

同じ本をつい何冊も買ってしまう

久々に本屋へ出かけた。 空き時間に立ち寄ることはあれど、本屋を目的に出かけるというのはそうそうない。田舎住みなので新刊が出るのも遅いし、食料品以外は大抵Amazonで済ませてしまうのが田舎者の習性なのだ。 そんな私が唯一Amazonで済ませられない買い…

私をアル中から救ってくれた一冊の本

今頃私はひどいアル中だったかもしれない。なぜならあの頃の私は四六時中酒を飲んでいたからだ。私はまったく社会不適合者と言って良かった。人見知りの加熱と思春期の病の氾濫が掛け合わさったその時期には、他人の目を見て話すことができなかった。挨拶も…

国語の教科書が私を狂わせた

本だけが友達だった。といえば少し言い過ぎだろうか。だけど本は、私にとって最も大切な友人のひとりであったことには違いない。幼少期に字を読む楽しさを覚え、小学校に上がる頃には毎週のように県立図書館へ通って、大好きな児童書のコーナーから十冊の本…

夏は太宰の『女生徒』を読もう

いちばん文学の香りがするのは秋であるのにはちがいない。秋はわかりやすくセンチメンタルな季節だからだ。耽美的な小説などは秋に読むとなおさらよだれが出る。けれど作品によっては春だったり夏だったり、それぞれ季節感を纏っているものがある。 私は例に…