或るロリータ

A Certain Lolita

私情

好きな街での日々の中でも、遠い故郷の夢を見る

夕方、自転車に乗って買い物に出かけるとき、赤や紫に染まってゆく空を眺めて、胸の奥がざわざわするのを確かめると、私はいつも嬉しくなる。生活の中に埋もれていった青春の火が、深い灰の底に、まだ幽かに残っていることを思い出させてくれるからだ。 学生…

東京に染まれなかった

東京は良い街だ。いや、正確にいえばとても便利で、平等で、たくさんの可能性がある街、だろうか。職も、娯楽も、人との出会いも、私の生まれた田舎町なんて、質も量も比べる対象にすらならない。それくらい、東京になくて田舎にあるものなど、ほとんどない…

明け方症候群

私はあまり集中力のつづく人間ではない。仕事をしている最中も、頭の中では「早く夜になってビールを飲みたいなあ」などと考えているし、物事に対して意識のすべてを注いで取り組むということがない。とにかく自堕落な人間なのだ。 ただし、世の中の何もかも…

この10年間、そばにはいつだってブログがあった

こうしてキーボードを叩くのもかなり久々である。一つ前の記事が去年の年明け、まだ世界がコロナ禍に突入する前だ。 そんなに長いこと文章を書いていなかったのかと、この二年ほどを振り返ってみる。たとえるなら夏休みの補習のあとの静まりかえった校舎をそ…

初めての転職が、人生の大きな一歩になった

私は人生で三度、転職を経験した。 環境を変えるのは、勇気と体力がいることだ。特に転職となると、会社によって規則や雰囲気はバラバラだし、正解は決してひとつではない。とりあえず一定期間を過ごせば自然に卒業できる義務教育とは違った、自発的なエネル…

もう一度ふるさとに帰れる日のために

昨年の暮れ、私はある分岐点に立っていた。人生の明暗を分ける決断をしたのだ。仔細に書くことは憚られるが、私の生活は少しだけ変わることとなった。仕事の幅がより広がり、自由になった反面、これまでよりはるかに重い責任を背負うこととなったのだ。今は…

そうして私たちは大人になった

昨晩から泊りがけの用事があったため、最寄駅に戻ってきたのは朝の早い時間だった。今日は成人の日だ。休日の穏やかな空気と、祝日の少し浮かれた空気とが混ざり合った街の中を、「振袖姿の娘とすれ違わないかなあ」などと思いながら歩いたが、まだ早い時間…

一年が終わるたび、思い出す人がいる

年末年始の雰囲気がとても好き。学生は一足先に冬休みに入って、大人は気ぜわしく仕事を畳みにかかり、みんなどことなく浮き足立った、あの数日間が。クリスマスのロマンチックな雰囲気から、一気に年の瀬へ駆けてゆく感じ。テレビ番組はとにかく毎年おんな…

心はいつまでも少年のまま

いつになったら自立できるのか、そんなことは考えずに過ごしてきた。小学生の気分のまま中学に進み、いつのまにか高校生になった。実家にいれば毎日あたりまえにご飯が出てきて、大きな家に守られて、いざとなれば責任なんて負う必要もない。自らの部屋に逃…

森田童子が死んでしまった

毎年六月になると必ず思い出す曲がある。切っても切れないみずいろで、私の心をつなぎ留めている儚い歌声がある。どこへ行って何をしようと、街も季節も私自身もすべて変わってしまっても、かならず戻れる場所がある。弱くて優しくてふるえてばかりいたあの…

「後悔」ってそんなに悪くない

誰より故郷が好きだった私を突き動かしたのは、他でもなく積み上げてきた後悔だったのかもしれない。後悔……あのころの私には、とにかくそれしかなかった。 青春と呼ばれるはずだった時代を、私はすべて後悔に費やした。あるときは立ち去ってゆく少年時代の面…

限りない自由なんて、ただ淋しいもの

一人暮らしをしてみたいと、誰もが一度は思ったことがあるはずだ。特に思春期の時分には、親の愛がどこかうとましく感じられて、自分にはもうそんなものは必要ない、それより都会のアパートで一人暮らしをして、好きなものに囲まれた部屋で思うままに時間を…

お酒をやめることにした

突然だが、お酒をやめようと思う。これは目標ではなく、決断だ。思えば私は青春の終わり頃からずっと、お酒とともに生きてきた。遥かなる思い出の数々はそのほとんどが酔いどれだ。飲むことでしか夜の行き方がわからなかったし、一杯飲むごとに延長されてゆ…

淋しさがつのりすぎて「孤独」をテーマにした本を作ってしまった

青春時代を通して誰にも負けない唯一のものがあるとすれば、私にとってそれはどこまでも孤独であったということだけだ。恋も、遊びも、勉学も、十代の私には手に負えないものだった。私は誰からも期待されず、また、誰かに期待することもやめた。だから私は…

思い出がお酒の味を変える夜

金曜日が好きだ。それは今でも変わりない。学校が嫌いで仕方なかった中学生のころから今日に至るまで、私は金曜日のために生きてきたといっても過言ではない。金曜日という黄金色の甘い時間のために、どんな辛い毎日にだって耐えるのだ。いつか、金曜日がく…

「選ばない」という選択をやめた20代前半

私は何かを選んだことがない人間だった。生まれた田舎町でそのまま育ち、親や友達ともそれなりに仲良く、喧嘩をすれば普通に落ち込み、与えられた幸福には素直に喜ぶ少年時代を過ごした。だが、一歩間違えば、私の少年時代はもっと悲惨なものだっただろう。…

失業からスタートした私の2016年

ちょうど去年の今頃だった。地元で勤めていた仕事を辞め、上京し、新しい仕事を始めて一か月ほどが経過していた。上京する前に抱いていた東京へのイメージは、かつて旅行に訪れた際の東京駅や日本橋の襟を正したビル群や、活気あふれる上野浅草のあたりであ…

貧乏はメンタルを弱くする

久々に文章を書く。気づけばずっとこのブログも更新していなかった。仕事が忙しくて、まるで手がつけられなかったのだ。 私がネット界隈から失踪してしまったと思った人もいたかもしれない。だが、私はなにぶん往生際の悪い人間なもので、美しい別れとか、鮮…

鎌倉の紫陽花を見に行ったら夏が始まった

仕事を始めてからなにかと忙しいこと続きで、ろくに休めもしない休日が続いているところである。無尽蔵に湧いてくるやりたいことリストに、どうにか優先順位をつけつつ、ふと、念願の鎌倉へ今年も行けていないことに気づいた。毎年毎年、鎌倉の紫陽花に憧れ…

どんどん何もできなくなってゆく自分が嫌で

仕事を始めてもうすぐ二ヶ月が経とうとしている。仕事をしていなかった頃の私は時々ハロワに行くことを除けば、毎日ブログを書くくらいしかすることがなくて、ブログを書くことでネット上に自分が今日生き通したという記録を書き残していないと、生きている…

いつしか私の前に立ちはだかっていた労働の壁が消えた

大人になるにつれて、自由でない時間のすべてが嫌いになった。小学生のころは苦手な水泳と跳び箱の授業がある日以外はそれなりに楽しく通っていたし、中学校のときは国語と社会とパソコンの授業がある日だけは何が何でも眠い目をこすって通っていたし、高校…

自堕落のループにはまっている

生活にも陰と陽があると思う。特に私はそれが顕著だ。調子のいいときには物事がすべてうまく行って体調も万全で、仕事も趣味もうまくいくものなんだけれど、そういう日はおおよそ一週間も続けばいい方で、すぐに私はだめな方のループに陥ってしまう。そして…

合コンで好きな文豪を聞かれたときの最適な答え方

まずはじめに申し上げると、私は合コンに参加したことがない。それは私が幼い頃からずっと心に決めた許嫁がいて、来る日も来る日も招待状を破り続けていたからという訳ではない。そもそも私の元には合コンへの招待状など届いたためしがなかったのだ。その原…

noteが100記事に達したので、自らの精神状態を振り返る

noteを始めたのが一昨年の七月のこと。もう二年も経とうとしているのがおそろしい。 noteは私にとって精神安定剤のようなものだった。あの居心地のよい空間で、好き勝手にポエムを書き散らすことは、ずいぶんと憂鬱な頃の私を救ってくれていた。 といっても…

社会復帰を果たして最初の一週間が終わった

金曜日の夜だ。最高の瞬間だ。この感覚を味わったのは数ヶ月ぶりである。地元にいた頃はいつも金曜日になると私は浮き足立っていた。帰ったら友達とお酒を飲めるからである。仕事中でもどんなお酒を飲むかとかどんな料理を作るかとかそんなことばかり考えて…

今日でニートを辞めることになった

ニート生活を始めて二ヶ月近くが経とうとしている。 steam.hatenadiary.com 自由にはちがいないけれど不安でいっぱいだった。際限のない自由はもはや自由ですらないことを知った。そんな期間だった。 どんな失敗も、どんなに無意味に思える時間も、あとで思…

故郷の言葉で話せる相手

故郷の言葉で話しているとき、私は早口になるらしい。 東京は田舎者の寄せ集めだと言うけれど、出てきたばかりの私には、誰が根っからの東京人で、誰が自分と同じ田舎者かなんて、一切判別がつかない。生活はスマートだし、着ている服もお洒落だし、言葉も自…

久しぶりに家族に会った

二十年以上住んでいたあの家の私の部屋が空っぽになってから、もう三ヶ月になる。始めのうちは引っ越した部屋の写真や食べている料理の写真など、芸能人さながらに逐一家族のグループラインに報告していた私だが、生活が忙しくなるにつれ、用事があるときく…

喉から血が出た

午前三時ごろ、私はお風呂に入っていた。そんな時間にお風呂に入ることがまずもって不健康の象徴のようであるから、同情の余地もないのだけれど、とにかく私は真っ白な洗面台に赤い模様を描いてしまったから、慌ててパソコンに向かったわけである。調べても…

ハローワークの説明会に行ったけど泣きたい

午前八時、目覚まし時計に叩き起こされるけれど、手探りでスイッチを切り、再び夢の中へ。次に目覚めたのは九時半を回った頃だった。焦って跳ね起きて、一杯の水を飲んでから、服を着替え、マフラーを巻いてコートを羽織り、帽子をかぶって家を出る。ニート…