或るロリータ

A Certain Lolita

古くさい恋の唄ばかり

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私は自分の部屋にいる時や、車を運転している時、そのほか空き時間があれば基本的に音楽を流している。ジャンルにこだわりはないけれど、フォーク・歌謡曲辺りが多い。この趣味、日本の歴史の中でみれば王道だと思うんだけど、周りの人間にまったく理解されない。洋楽とか、クラシックとか、あるいは超マイナーバンドというんならまだ判るんだけど、歌謡曲なんてただ古いってだけで、Mステとか出てる流行のJ-POPと系譜としては同じだよね。だから今、流行の音楽を追いかけてる若者も、古くなったら常に循環させて新しい物を取り込んでないと、十年後に今と同じ音楽を聴いてたらやっぱり未来の若者から理解はされないのかなと思う。

友達とカラオケに行っても、構わず私はいわゆる懐メロってやつを歌うんだけど、懐メロどころかそもそもみんな知らないから、一周回って評価してくれる人や、古くさいってはなから相手にしてくれない人もいる。ジャンルでくくるのも正直あまり意味はないと思うけど、それ以上に、古いかどうかって音楽を聴く上でそんなに重要かな? たまに歩み寄って来る人もいるんだけど、そういうのは決まって渋いのを目指してるアダルト気取りみたいなのが多い。「古い曲もいいよね。」という感じ。もちろん複数人で行ったカラオケで私の知らない曲ばかり並ぶ中、懐メロの中でも特にメジャーなやつにしても一曲、二曲、歌ってくれる人がいるだけで内心凄く親近感を覚えて嬉しくなるんだけど、彼らは往々にして流行に超敏感である。EXILEなんかの新曲を踊りまでコピーしてたりする。つまり彼らは大食故に「古い曲」というジャンルも少し齧っているに過ぎなくて、そのことに気付いたとき、一気に淋しくなる。

むしろわかり合えば話が早いのは、ちょっと捻くれたようなバンドとか妄信してるタイプの人。彼らはちゃんと曲の世界観とかに浸ってるから、ピンと来れば「今度井上陽水のアルバム貸してよ。」などと向こうから言ってくる奇跡も起きないことはない。あとは、失恋ソングを泣きながら歌っちゃうような子。失恋ソングに垣根はないのだ。

もちろん、私は別にみんなに理解して欲しいとか、そんなつもりはさらさらない。ただ、「古い」ってだけでコケにするのだけはどうか止めて欲しい。辛くなる。メロディーがダサいとか、歌詞が薄っぺらいとか、そんなことで批判されるんなら幾らでも構わないと思っている。それは今の音楽にも言えたことで、個人の感性に委ねられるから。だけど、発売された年だけで判断することに意味はあるのか。昭和に発表された曲だから? それだけでセンスがないとか、変わり者とか、だからモテないんだとか言われると、半分当たってるけどかなしくなる。

前にある友達に言われたことがある。
「××って家でも演歌聴いてんの?」
ちょっと待ってくれ、確かに演歌も好きだけど、そこまで詳しくないよ。それに、家でもってなんだ。カラオケで歌ったことある演歌と言えば津軽海峡・冬景色くらいだし、彼を車に乗せたときにも演歌を聴いた覚えはない。

なるほど、彼は古い曲を全部演歌だと思っていたらしい。私は同年代とカラオケに行った時、一応微妙に配慮してサザンを歌う割合を増やすんだけど、レパートリーの中でも唯一ノリの良いはずのサザンでさえ演歌と思われたんじゃ、もうどうしようもない。若い人は別にテンポで決めてるわけじゃないのかな。とにかく、私には何故サザンが演歌に聞こえるのかがまったく不明だった。前に2chでそういう話題の時ネタにされてたことはあったけど、まさか本当だったとは。若い人は、私にはない耳を持っているんだろうか。といっても、私もまだ若いつもりではあるんだけど。

だから私は、会社の飲み会でオジサン連中に連れられてスナックへ行くときには、とても活き活きとしている。といっても、そんな場で暗いフォークを歌うのは憚られるので、明るめのアイドルソングなんかに頼っちゃうんだけど。結局気兼ねせずにお互い淡々と好きな曲だけを歌えるような相手と二人で行くのが一番楽しいカラオケだね。

今のオジサン世代が死んじゃって、自分がオジサンになったときが、もっとも恐ろしいような気がしている。下手したら、スナックのママでさえセカオワとか聴いて育った世代になっちゃうわけだし。その頃には私は70年前の曲を歌うオジサンになっているのだろうか。今で言う軍歌とか童謡とかそのレベルになるのか。……そうなったら、それはそれでおもしろいような。