或るロリータ

A Certain Lolita

横浜中華街の風景

私の想像していた都会とは、人がぞろぞろ動き回って息の詰まりそうな背景のない人混みのことだったのだが、上京してすぐに訪れる機会のあった横浜中華街は、思いの外街の地肌が覗いていた。

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どこか物憂げにも感じられた。

昼飯時で、腹の虫も幾分のどを鳴らしていたから、どこか中華料理の店に入ろうと辺りを見回したが、どこも似たような店が延々と立ち並んでいて、選択肢の多すぎるのも困るものだと思った。

そうしてせめてもの天邪鬼に、大通りから少し折れて、裏路地の小さな店構えの料理屋で、店員の女性がつたない日本語を用いて声をかけてきたものだから、断る理由もない私はその店に入った。ランチコースは千円程度で、それにビールと紹興酒をつけても安上がりだった。

それから店を出てお土産物を物色したあと、少し時間が残されていたのでふらふらと歩いてみた。歩いていたら、中華街らしき風景はなくなってしまい、なんだか私の地元とさして変わりない街の風景が現れつつあった。

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もう夕暮れだった。

どこも変わんないんだな。

駅や商店街、道路や川を挟んで、また同じような景色が続いてゆく。

この道の延長線上、地続きに、いつか故郷にたどり着けるのかと思うと、私はもう少しだけ都会の街を愛してやろうと思った。