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或るロリータ

A Certain Lolita

一年が短すぎやしないだろうか

今年が終わってしまう、そう考えると無性に焦ってしまうものだ。毎年毎年、なんだかしらないけれどやり残したことがあるような気がしながら、その心残りを翌年に繰り越して、かといって心変わりするでもなく、いつも通りのぱっとしない新年を迎える。そんな繰り返しだ。幼い頃は、お正月といえば、お年玉という一大イベントがあったためか、もう少し特別な感じがしていたはずなのに。親戚の家に集まる時、大人たちの畏まった様子の陰から、もらえるお札の枚数を指折り計算してほくそ笑んでいたあの頃の方が、よっぽど健康的であったような気がする。

ちょうど一年前、何をしていただろうか。考えるとおそろしくなるのは、それがあまりについ先週の出来事のようにさえ思えてしまうからだ。私はちょうど一年前、まだ地元の九州にいた。そうしてまだ上京することなんて何も決まっていなくって、ただ漠然と「来年こそは仕事辞めてやるぞ」と考えていただけなのである。それがたった一年で、仕事を辞め、新しい仕事を始め、おまけに故郷を離れて、淋しがり屋の私がひとり暮らしを始めるなんてこと、自分が願ったはずなんだけれど、あまりにめまぐるしくて未だに信じられない。

一年前の今頃は、二十年以上過ごした実家の、あの居心地の良い自分の部屋で、座り慣れたソファに腰掛けて、大きなテレビに好きな映画を流して、夕食の後だと言うのに自作のつまみを食べながら日本酒でも飲んでいたことだろう。あんなに完成された、言わば私の城は、週末になるとよく友達が酒盛りに集まって賑やかだった。たった一年もしないうちに、がらんどうの淋しい部屋になるだなんて思いもしなかっただろう。

臆病者の私が勇気を出して、初めて自分から行動を起こしたのだ。その結果が今の暮らしに繋がっている。そう考えると、何も失敗なんてしてないはずなのに、やはり人は淋しさに脆いらしい。まだふた月と経っていないここでの暮らしが、もう永遠のように感じられて、故郷が彼方の思い出のように恋しくなって、駆け出しても辿り着くはずのない遠い地平の果てまで逃げ出してしまいたくなる。

買いたての筆ペンでいたずらに書き殴った羊の絵を、何人もの友達に送りつけて、余った年賀葉書の処理に邁進していたあの日から、もう一年経つだなんて。明日は十二月三十一日だ。もう、あと少しで、今年が残り二十四時間を切ってしまう。あきらめて、受け入れて、そしたら2016年だ。一体どんな年になるだろう。案外、一年後の私は、もうここには住んでいなかったりして。