あなたの十八番は?と訊かれると困ってしまうが、知らない人の前でもまず歌いたい曲というのはいくつか存在する。そのひとつが風の『22才の別れ』である。
風というバンドはかつてフォークソング全盛期のかぐや姫の伊勢正三がやっていたバンドである。バンド自体の知名度は低く、『22才の別れ』がかぐや姫の楽曲だと思っている人も少なくないのではないだろうか。
そんな『22才の別れ』であるが、度々CMソングなどにも起用されており、おそらく誰も耳にしたことがあるはずだ。ちなみに有名な『なごり雪』も伊勢正三の作った曲であり、それぞれ男性の視点と女性の視点から歌われた曲である。
変わってゆく自分、一方で相手には変わらずにいて欲しいと願う、このやりきれなさ。思い出だけはどうにか自分の中で守っていきたいという。人はどうにも大人にはならなければいけないらしい。ずっと子供のままでいられたら……誰もそう願ったことがあるのではないだろうか。
私は次にスナックへ行くことがあったなら、この曲を歌おうと思う。そうして泣こうと思う。涙を流してスナックのテーブルを濡らすのだ。乾き物が乾き物でなくなるとき、私はまたひとつ思い出から遠ざかる。