先日、秩父の方で行われた「寺坂棚田ホタルかがり火まつり」なるものへ行ってきた。コンセプトは「棚田を楽しむためのイベント」らしい。こんなに素敵なイベントを今まで知らずに過ごしてきたなんて……と少し悔しい気持ちになりながらも、これは夏開きにぴったりだと、カメラ片手に乗り込んできた。
特急はやはり楽しい。ゆったり座って窓の外を楽しむ余裕があると、移動時間も苦じゃなくなる。『ぱらのま』を読んでから、無性に鉄道の旅が恋しくなっていたところだし。
会場近くの駅のホームには、若い人の姿もちらほら。みんな同じイベントへ向かうのだろうか。棚田の魅力が分かる若い人なんて……すごく友達になりたいです……と思いながらも、話しかけられるはずもなく。
横瀬駅。降りるのは初めてだった。
駅舎はいい感じにこぢんまりしている。そして郊外にありがちな線路を歩いて横切るタイプのホームはなぜだかワクワクする。列車の本数も少ないから線路の上でゆっくり写真を撮れたりするし。
出かけるときは曇り空で心配だったが、暗くなる前に晴れ間が見え始めて安心する。初めて訪れた町だが、田舎の空には何か共通したものがあるのだろうか。故郷を思い出して少し淋しくなる。
ちなみにホタルといっても本物のホタルを鑑賞するイベントではなく、田んぼに灯した無数のかがり火を楽しむものである。その様子がホタルのように見えることに由来しているのかな、と思ったりしたが、実は近隣では本物のホタルも見られるらしい。
旅館もあるらしく、来年は時間が取れたら一泊してホタル捜しに出かけてみたい。
屋台の数はそれほど多くないが、うるさすぎないくらいがちょうどいい。地元の方々が凄く協力的で、町全体でイベントを盛り上げようという感じが伝わってきた。ちなみに駅から会場までは無料のシャトルバスが出ている。
歌や楽器の演奏も行われ、意外と盛り上がっていた。かがり火を背に素敵な歌声に酔いしれるものいいだろう。
ひとつひとつのかがり火は、ペットボトルで作られたもの。これだけの数、想像するだけで途方もない。
本来は真っ暗なはずの夜の田んぼが、星が落ちたような風景に変わる。祭りとはいえ、訪れた人はみな息をのむようにこの幻想的な雰囲気に包まれて、どこまでも蛙の鳴き声だけが聴こえていた。
来年も必ず来たい、そう思わされる一夜となった。素敵な夏のはじまりだ。