或るロリータ

A Certain Lolita

淋しさがつのりすぎて「孤独」をテーマにした本を作ってしまった

青春時代を通して誰にも負けない唯一のものがあるとすれば、私にとってそれはどこまでも孤独であったということだけだ。恋も、遊びも、勉学も、十代の私には手に負えないものだった。私は誰からも期待されず、また、誰かに期待することもやめた。だから私は、すべての答えを自分の中にだけ求めたのだ。

話す人のいない教室の中で手元の文庫本に目を落とし、夕暮れを待つ日々。淋しい田舎道を自転車で帰りながら、どこかへ行きたいと願う。それがどこなのかは、わからなかったけれど。

大人になっても、私と腕組んで歩くのは、いつだって孤独という恋人だった。孤独は一種の癒しでもあった。楽しいはずはないけれど、そのかわり、悪いことも起こりえない。足元にただよう霧のように、どんなときでも安心して私を憂鬱にさせてくれる。
だから私は夜がくるたび孤独を見つめ、孤独を愛した。

酒を飲み、淋しくなり、たちのぼる孤独の影をつかまえて解読する。孤独を題材に文章をつづることで、私は永久機関と化したのだ。noteやTwitterなど、ネット上のいくつかの場所に、ふらりと姿を現しては、ぽつりと孤独を書き残す。そんな夜が積み重なって何年にも及んだとき、やがて私は「この歳月を形にしてみたらどうなるだろう」と思うようになった。

過去の自分の文章を読み返すことは、正直、楽しいことだった。世にあふれるあらゆる書物のどれをとっても、自らの文章ほど簡単に思い出を呼び起こしてくれるものはないからだ。決して名文、美文の類いではないが、平成の或る一時期に孤独を患った青年の残雪として、見世物小屋へ入るような心持ちでこの本を手に取ってくれる人が現れたなら、あの淋しい青年の亡霊も幾らか救われるだろう。

 

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タイトルは「だってワルツが聞こえないから」。以前、noteに上げたテキストのタイトルから拝借した。

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目次はこんな感じ。

 

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各章の扉はこんな感じ。

 

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読んでいて陰鬱になるような文字列のつらなり。

 

では、内容について少しずつ紹介していきます。

 

過去の私のnoteとTwitterのつぶやきから、夜にひっそり読み返したいものをまとめました。
がらくたの箱をひっくり返して懐かしみながら選び抜くような作業でした。
特に統一性はなくとりあえずまとめただけの章です。

 

ノスタルジア

「夜」と少しかぶってしまうのですが、より淋しさに焦点をあてたものを集めました。
故郷にいたころに書いたものもあれば、上京して故郷を恋しがりながら書いたものもあり、自分自身の中にある「懐かしい」という感情のつまみを一気に回されてしまいます。



これ以降のページは小説になります。


ジン・ハウス・ブルース

以前noteショートショートフェスティバルに投稿した作品。
土曜日の午後に砂浜でお酒を飲むのが趣味の男性と、そこに現れた女性とのみじかい物語。

 

いつか春が来ても

主人公は、ひたむきに生きるひとりの女性。
たったひとりの大切な恋人がいる。
しかし、ある日恋人の前に現れたブルーのコートの女。
女の存在により、主人公は徐々に恋人に不信感を抱き始める。

 

ロマネスク

以前、季刊マガジン水銀灯に寄稿した作品。
「雪」というテーマをいただいたにもかかわらず、真夏を舞台に書いてしまった天邪鬼な作品。
女を知らない純粋な男が、たまたま上司に連れられた入ったキャバクラで、美しい女性に出逢う。
恋をあきらめかけていた男が、ふたたびロマンスに目醒める物語。

 

上下水道

かなり昔、とにかく青春のにおいのするものがすべて嫌いだった時期に書いた作品。
「初恋」という澄み切った探照灯に追われ続ける日々の中で、心と裏腹に身体は大人へ近づいてゆく。
抑えきれない欲望や、耐えきれない世間からの眼。
それらから逃れるために恋をすることは、果たして正しいのだろうか……。

 

裏地に花

酔っぱらったときの私は無闇にキーボードを叩いてしまう癖があるのだけれど、そんな酩酊の夜に記憶さえあやふやなまま書き連ねた文章の欠片を束ねたもの。本書の中でもっともとりとめがなく、人に見せるのが憚られるものである。

 

 

 

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A5サイズ100ページ、カバーは4色、本文は黒とミッドナイトブルーの2色印刷です。
ちなみにカバーの写真は昔「尾道灯りまつり」で撮影しました。

もともと自分で楽しむために作ったのですが、ついでなので少しだけ余分に作っています。もし買ってやってもいいよという物好きな方がいましたら、以下のnoteをご購入の上、記載のアドレスか、Twitterなどのメッセージでご連絡ください。
そもそもnoteなんてよくわからない!という方もTwitterなどでメッセージください。

▶︎『だってワルツが聞こえないから』購入用ページ 

ちなみに以前写真集もつくってます。こちらは夏が好きな人向け。

steam.hatenadiary.com

 

今週のお題「芸術の秋」