或るロリータ

A Certain Lolita

貧乏はメンタルを弱くする

久々に文章を書く。気づけばずっとこのブログも更新していなかった。仕事が忙しくて、まるで手がつけられなかったのだ。

私がネット界隈から失踪してしまったと思った人もいたかもしれない。だが、私はなにぶん往生際の悪い人間なもので、美しい別れとか、鮮やかな去り際とか、そんなものに無縁の人生を送ってきたもので、あらゆる物事に対して幕を閉じるのが苦手な性分なのだ。だからブログなど継続するのも苦手だし、仮に永らく放置したところでそれが永遠になることはまずないだろう。たとえ十年間更新しなかったとしても、十年ぶりに心情の変化があったなら、あっけなく沈黙を破ってしまうそんな人間だ。

さて、今回重い腰を上げて筆をとる(といっても入力しているのはパソコンで、やみくもにキーボードの上でタップダンスを踊っているだけだが)に至ったのは、この頃とにかくついてないことが多すぎて、さすがに絶望という言葉を使わないでは済ませられない状況に陥ってしまったからである。

まず始めに申し上げると私は未だに貧乏だ。春に再就職を果たして仕事をこなすようになった一方で、賃金の方は対して期待が得られず、未だ心寒さにふるえる毎日を送っている。そんな中でも数少ない友人というものがおり、数年ぶりに再会した上京組の同郷の友人と、酒を飲むことになったわけである。普段外で酒を飲むことなどまずない私、飲むとしても中央線沿いの安い酒場で一杯二杯の酒をけちりながら飲むのが関の山、そんな私が今回友人に指定された場所は新宿であった。新宿など大抵は中間地点として選ばれるだけの土地であり、好んで飲みたいと思える街ではなかった。しかし決まってしまったものは仕方がない、私は乗り気のしない思いでその夜新宿へと向かった。

昼間は晴れ渡っていて陽気だったが、夜になるとまっすぐ歩けないほど風が強かった。友人と合流したがあまりの寒さに手足は凍え、一刻も早くどこか建物の中へ入りたいと歩き始めた。目当ての店もないままにふらついていると、チェーン居酒屋の密集したビルの前で客引きの若い男が私たちを呼び止めた。

「どこかお探しですか?」

私は客引きというものなど信用していない人間だから、そんな戯言に付き合っている暇はないと歩を進めようとしたのだが、普段居酒屋になど滅多に行かない友人は、私より東京歴の長いくせしてまるっきり田舎者のような面持ちで客引きの声に耳を傾け始めた。

「鳥貴族は今いっぱいですよ。その上の階の店ならご案内できますよ。割引つけときますよ。」

男の文句に友人は親切にしてもらったと思い感謝さえする。私は苦い表情をしながらそのビルへ入った。

そのときのことを思い出したあとで今の懐の中を見ると、余計に後悔が押し寄せてくるけれど、端的に言うとその店はぼったくりであった。うまくもない料理に無愛想な店員。おまけにわけのわからぬサービス料などを加算されて、一人三千円あまりを毟り取られた。しかもなるべく金のかからぬようにと怯えながら注文した結果だ。三千円あればいつもの居酒屋でそれなりによい日本酒でも飲めたのにと、ほとんど泣き出しそうな思いで店を後にして、頰に涙を凍りつかせて私は中央線を下った。

それから家に帰ると郵便受けに今年唯一応募した文芸新人賞の結果通知葉書が届いていた。今年はあまりの忙しさに、ろくに小説など書けなかったのだが、毎年応募しているその賞にだけは、どうにかこうにか一作提出することができたのである。例年、割といいところまで通過しており、今年はそろそろ飛び上がるような電話の一本でもかかってくるかと思いきや、なんと例年の影もなく非常に残念な選考結果がそこに記されており、葉書一枚で私の一年は幕を閉じたのだ。

貧乏になればなるほどメンタルが弱っていく。ほんの数千円の出費で胸が痛み、未来への不安がつきまとう。お金の心配をせずに生きられたのは、高校生までだっただろうか。大人になれば、生きているだけで税金がかかり、家賃が、光熱費が、食費がかかることを知る。漫画を買うためだけにお小遣いを貯めていればよかったころが今となっては恋しい。懐のふくらみがそのまま人生への展望へつながるこの頃が、息苦しくて仕方がない。

ただただ愚痴のようになってしまったけれど、そんな感じで、どう年を越そうか考えている私です。

 

お題その2「今年、買ってよかった物」