或るロリータ

A Certain Lolita

この10年間、そばにはいつだってブログがあった

こうしてキーボードを叩くのもかなり久々である。一つ前の記事が去年の年明け、まだ世界がコロナ禍に突入する前だ。

そんなに長いこと文章を書いていなかったのかと、この二年ほどを振り返ってみる。たとえるなら夏休みの補習のあとの静まりかえった校舎をそそくさと歩いているような、嵐の日に雨戸を締め切って昼間からワインを飲んでいるような、あるいは金曜日の残業終わりのネオンサインのような。いずれにしても一瞬にして過ぎてゆくと知っているからこそ身を置いていられたものだ。けれど夏休みはいつまでも終わらなかったし、嵐はこの街から過ぎてゆかなかったし、金曜日の夜は今も永遠につづいている。

私が、あるいは私だけでなく多くの人々が見誤っていたのだろう。刹那的なものだと信じていた、この不安と、少しのドキドキとを抱え、浮き足立ったまま日常を待っていたら、結局なんだか空虚なままに二年ちかくを過ごすことになってしまった。この期間、世の中の機微に気づき、新たに何かを始めた人や、逆にいっそ腹をくくって、人生の大きな決断をした人も周りにはいた。しかし私の人生はそんなに操縦性が高くない。

だから、変わってゆく世界を受け入れられずに、未練がましく過去を想う私には、こんなお題がお似合いだろう。

——はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問

ブログ名もしくはハンドルネームの由来は?

ブログ名は有島武郎の『或る女』をもじったもの。

地元にいた頃、毎週のように温泉に通っていて、そこで物思いに耽るのが好きだった。サウナに入っていたときに「ブログをやりたい」と思い立ったためハンドルネームは当初「sauna」としていたが、そのまますぎるのと、響きがあまり可愛くなかったことから、一週間ほどで「Mist」に変更。今に至る。

 

はてなブログを始めたきっかけは?

前身となる日記ブログをはてなダイアリーで始めたのが2008年のこと。もう13年も前になる。本当に日記帳にしたためるような、極めて私的な文章ばかり載せていた。途中ではてなブログというサービスが始まり、少なからず他人に読まれることを前提とした文章を書いてみたいと思うようになっていたこともあり、「或るロリータ」に移行。現在、他人に読まれることを前提としていない文章はnoteの方に棲み分けしている。

 

自分で書いたお気に入りの1記事はある?あるならどんな記事?

振り返ってみると、このブログは私の人生の軌跡である。故郷でのんびり過ごしていた頃の記事に始まり、転職を決意し、打ち明け、上京し、失業し、再就職する。予定していたことも、していなかったことも、その度にブログに吐き出すことで心の安定を保っていたのかもしれない。読み返すとそれぞれの時期の記憶が鮮明によみがえってきてハラハラするけれど、何より魂を込めて書いた文章といえば迷いなく次の記事だ。

steam.hatenadiary.com

今夜、久しぶりに森田童子を聴いて眠ろうと思う。


ブログを書きたくなるのはどんなとき?

書きたくなる瞬間は一日に一度くらいあるけれど、書き始めるに至るのは稀なことである。頭の中で最初の数行ぶんくらいを考えながら洗い物をしたり、シャワーを浴びたりしていても、いつしか生活の音に忙しなく掻き消されてしまって、やがてあきらめの夜がくる。iPhoneのメモには書きかけの想いの切れ端が、しけたマッチのように捨てられず溜まっていく。だからこんな風にテーマを与えられたときは、重い腰を上げやすい。私は〆切が決まっていないと何もできない人間なのだ。それは冒頭で申し上げた通り、この記事が約二年ぶりの投稿であることが証明している。

 

下書きに保存された記事は何記事? あるならどんなテーマの記事?

数えてみると15記事あった。前述のようにほとんどが最初の数行でやめたものか、思いついたタイトルだけを先につけたものである。それこそ五年以上前に考えたものがほとんどで、今思えば続きを書ける気がしないものばかりだが、いくつか紹介する。

「夏をさがしに自転車で冒険に出かけた」
「作業に集中したいなら、浴びるほどお酒を飲んだ方がいい」
「長風呂のすすめ」
「私の帰宅は美しかっただろうか」

自分の記事を読み返すことはある?

頻度は少ないが、読むときは一気に読み返してしまう。お酒の勢いや真夜中のテンションで感情に委ねて文章を書くことが多いので、書いているときの気持ちは、書き終わった瞬間から薄れ始めることがほとんど。そのため後から読み返してみると、新鮮な気持ちで文章が入ってくる。まるで感情を閉じ込めたタイムカプセルを開けているような気持ちになれるのだ。だからたまにブログを開くと、ついつい関連記事などを遡って懐かしさに浸ってしまう。

 

好きなはてなブロガーは?

Sakak's Gadget Blog」のケイスケさん。写真がとにかくかっこよくて昔から憧れています。

 

はてなブログに一言メッセージを伝えるなら?

シンプルで使いやすいのと、定期的にお題を与えてくれるので、自堕落な私でも文章の書き方を忘れずに今日まで生きてこられました。ブログという場を与えてくれてありがとうございます。私だけでなく、色んな人の大事な思い出が残されていて、まさにブログは財産だと思います。どこでもドアがなくても、国会図書館に行かなくても、誰もが世界中の人々の思い出を覗き見ることができる。こんなに素敵な場を、できれば永遠に残しつづけて欲しいと願うばかりです。

 

10年前は何してた?

先が見えない毎日で、暗く沈んでばかりいた。社会に出るのが怖くて、逃げ出してしまいたくて、井上陽水の「カナリア」という曲を暗い部屋でリピートしながら、毎日、時間よ止まれと願っていた。すでに絶望の真っ只中にいたはずだけれど、未来はそれよりももっと絶望の果てに違いないから、せめて今くらいの絶望で手を打とう、この瞬間に留めておいて欲しいなどと、悲しい論理を振りかざしていた。あのとき、人生の結末を自分の頭の中だけで勝手に決めつけて、前に進むことをやめてしまわなくてよかった。もう、10年も経ちました。

 

この10年を一言でまとめると?

悲しいことも苦しいことも、恥ずかしい失敗もたくさんあった。決して正しかったかは分からないし、順調だったとも正解だったとも言い切れない。けれど遠回りも含めてそんな10年の道程の先に今の私がいることは事実だから、全てをひっくるめてこの10年間を認めやりたい。おつかれさま。