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或るロリータ

A Certain Lolita

女性が髪を切るということ

女性が髪を切るということがどういうことかは、男にはよくわからない。実は深い意味なんてないと言われているけれど、その一方で、やっぱり何かしらの意味があるのではないかとも疑ってしまう。結局私たちはその真相を知ることなどできないのだ。あの日女子…

いま、私の手元に夏がある

どうやってこの本の存在を知ったのか憶えていない。おそらく誰か知り合いのつながりのツイッターなんかで偶然発見したのだと思う。それよりも最初にこの表紙が目に入ったときのイラストといい、表題の短歌といい、手書きの文字といい、すべてが私の捜してい…

私は懐かしくなりたくて映画を観る

ときどきそんな気がするのだ。私にとって物語の筋道などどうでもよくて、ヒロインが有名女優かどうかなんて関係がなくて、監督の裏設定などはなから興味がないのだ。私は映画を観るときいつだって、その風景や音楽、ヒロインの細やかな動作や声に気を取られ…

忘れられない猫のこと

ときどき我が家の庭に忍び込んでいる猫がいた。我が家は動物を飼わない方針だったから、私はほとんど動物に触れる機会もなく育った。見るのは可愛いけれど触れるのは苦手だった。往々にして動物の前で怯えた表情を見せる人間は動物にも好かれない。私もこれ…

夜の街をドライブしていた頃

まだ故郷にいた頃、私はときどき夜になると思い立ったようにドライブへ出かけた。おんぼろの軽自動車に乗って、街灯もない山道を下って街へ出た。私にとって毎晩の憂鬱とたたかう燃料はアルコールだけだったから、ドライブをするという日には生唾を飲み込ん…

空の綺麗な町だった

東京には二種類の人間がいる。それは東京で生まれた人間と、田舎で生まれた人間である。私は後者、東京の空を狭いと思ってしまう方の人間だ。あらゆる場所で人々は持ち寄った故郷の話をする。故郷の話は人と人とをいちばん初めに繋ぐきっかけになる。そうし…

気になるあの娘の給食を

四時限目の終わりを告げるチャイムが鳴ると教室は一斉にがやがやと騒がしくなる。班ごとに机を向かいあわせる。給食の時間が来たのだ。給食当番の班はみんな白衣を着て帽子をかぶっている。私は友達と連れ立って手洗い場へ向かう。 手洗い場はこの階にはふた…

ベッドの上で永遠の時を過ごした

中学生の頃、私の部屋にあたらしいベッドが来た。両親が買ってくれたのだ。至ってありふれた膝ほどの高さに、ほどよい硬さのマットレスがあり、リモコンでリクライニングできる仕組みになっていた。入院したことのなかった私は、物珍しさにわざわざベッドを…

人前で絶対に歌えなかった私がカラオケを好きになるまで

歌が好きな子供だった。流行りのJ-POPやTVのCMソングを、親の前でも近所のおばさんの前でも友達の前でもいつも口ずさんでいた。街はどこでも私にとってステージだったし、太陽はスポットライトだった。 特に女性歌手の曲が好きだった。少年特有の甲高い声で…

初めて創作した日のことを憶えているか

ニートだって酒を飲みたくなる日はある。戸棚に大切に仕舞っておいた電気ブランを取り出して、センチメンタルな曲をかけながら、少し、心を休めようと思った。私にとって懐かしむという行為は、現実のしがらみから逃れられる幾つかの方法のうち、もっとも手…

バレンタインデーの思い出

それはまだ私が小学生だった頃の話である。私には好きな女の子が何人かいた。幼少期から惚れっぽい性格をしていたのだ。幼稚園の頃なんておんなじ水色組の中だけでも十人以上好きな娘がいたくらいだから、小学生になって大分マシになったといえる。 1年3組の…

私が高校時代に友達ができなかったわけ

私には友達がいなかった。ただの一人もいなかった。人が「青春」と聞いて真っ先に思い浮かべるであろう高校時代の三年間にである。 私が生まれたのは九州の片田舎である。町には大きな川が流れ、山もあったし田園風景も広がっていた。むしろそれしかなかった…

私が上京を共にした12冊の本

上京してもうすぐ三ヶ月だ。計画通りには行かないことばかりだけれど、なんとか生きている。思い起こせば上京前日も、ギリギリまで荷造りをしていた、というか、当日の朝にもまだ準備が終わっていなかったような気がする。ろくに寝る時間もなく、早朝に起き…

大人になんてなりたくなかった

明日で二十歳になるというとき、私は好きな子に告白すらできなかった中学の卒業式の時と同じ気持ちでいた。十代という、許されることが当たり前の、人に倚りかかることが当たり前の、自分勝手で自堕落で、それなのに愛される権利を持っている瑞々しい季節が…

こんな時代だから年賀状を出す

私がまだ小学生の頃、この季節になると、毎年十枚前後だろうか、親から年賀葉書をもらってひとつひとつに友達の宛名を書き記していたのを覚えている。友達同士で年賀状を送り合うのが通例だったのだ。父親に頼んでパソコンで好きな漫画のイラストを印刷して…

もしも四年前に戻れたなら

私は変化というものに弱い性格をしているらしい。小学生の頃、中学生の頃、クラス替えが行われる度に不安で吐きそうになった。果たして馴染むことができるだろうか、うまくやっていけるだろうか、自己紹介はどうしよう、最初に誰に話しかけよう、あいつは知…

10年以上かけて貯めてきた貯金箱を壊した

小学生の頃から私はとにかくケチな性分であった。月のお小遣いは、一年生なら100円、二年生なら200円といった具合の、好きな時にジュースも買えない生活だったから、なおさらお金に対しては敏感だった。お小遣い以外での収入源といえば、家のお手伝いである…

教師が「まともな人」である必要はないのかもしれない

本当に学校とはギャンブルだ。クラスメイトも重要だが、担任が誰になるかというのもまた、一年間を大きく左右する条件にちがいない。そうしてそれは往々にして自ら選択することはできない。四月になり、新しいクラス割の紙が張り出され、始業式の折に新しい…

夏が終わってしまう

一昨日、無事に退職の意思を告げることができた。 明日、退職の意思を告げる - 或るロリータsteam.hatenadiary.com ツイッターなどでも色んな方に励ましのコメントを頂き、本当に勇気付けられた。それがなければ、怖気付いて言えなかったかもしれない。明日…

いちばん古い記憶ってなんだろう

もっとも古い記憶は3歳くらいまで - トロサバ!koujitokuchan.hatenadiary.jp この記事が興味深かった。いちばん古い記憶なんて今まで考えたこともないけれど、考えてみるのも面白いと思った。そうして考えてみることにしたんだけれど、まず「記憶」と「記録…

国語の教科書が私を狂わせた

本だけが友達だった。といえば少し言い過ぎだろうか。だけど本は、私にとって最も大切な友人のひとりであったことには違いない。幼少期に字を読む楽しさを覚え、小学校に上がる頃には毎週のように県立図書館へ通って、大好きな児童書のコーナーから十冊の本…

真夜中の学校

ひどく酔っていた。酔っていたから、何もかも許される気がした。 卒業して何年経つだろう。変わっているようにも、あの頃のままのようにも見える。 玄関に灯りがともっている。誰もいないのに不思議だ。 昔よくこうやって水を飲んだなあ。ぬるいのにごくごく…

はじめまして。6さいのおんなのこです。

そんな設定を急に思い出した。私がこの恐ろしいインターネットの世界にどっぷり浸かるようになったのは、2007年のことである。家族共用のパソコンで好きなサイトを巡回したり、ちまちまとヤフーブログで日記にもならぬ雑文を無意味にアップしていたインドア…